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らくだの涙

人間社会ではニュースになることだけど、動物が本能的に子供を拒絶することなんてあるんだ、というのがまず驚き。
子供に対する愛憎とは紙一重なものなのだろうか?
子育てを拒否する理由とは?
子供も居ないので、そこら辺の真相はわからない。
親から見放されたこの白い子らくだは、あのままだと死んでしまったのだろうか?そんな自然の摂理をも覆したものは、なんと音楽だ。
荒涼としたモンゴルの平原で、馬頭琴と女声で奏でられる(ミニマルとは逆の)長いスパンでできた曲。演奏の前の儀式での、母らくだのコブに馬頭琴を付けてボディーを共鳴させた音。いずれも近くて遠いような、距離感を失うような感覚になる。
母らくだは長い時間それらをきいて、涙する。そして母乳を与え出す。
改心した、というのはおそらく言い過ぎだろう。一種のトランス状態になって、深い深い落ち着きが得られるのだと思う。そんな音楽だ。
演奏は一流のものとは思えない。いわゆるフィールド・レコーディングなので、音質もよくない。しかし、それらがかえってグッと胸を打つ。(エンディング・ロールの「ちゃんと」レコーディング/ミックスされた曲には、逆に違和感があった。)
このドキュメンタリーが素晴らしいのは、らくだの親子を軸にしつつも、世話をする4世代の人間家族の群像を(変に湿っぽいリンクではなく)交差させているところだ。ナレーションで説明などせず、ありのままに。そのことがバランスのいい立体感をつくっている。
TVが珍しくてほしくてたまらない子供にさえカメラを意識させない程、この家族に溶け込んでいる制作チームに、恐ろしく膨大な労力と時間が必要だったことは想像に難くない。
彼らにまず必要なことは人間性みたいなものだったと思うし、それを反映させるだけの物理現象が起こったことが奇跡だ。
★★★★☆
