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The Wrestler
突飛なストーリー展開がある訳ではない。最初から結末はわかっている。
しかし、大きく心を揺さぶられる。
プロレスラーがいかに特別な職業であるかを示した作品ではない。
むしろ、命を懸けて仕事をしそれをすり減らして純然に生きる、というステージにおいて、いかに彼らのやっていることが普通であるかを描いている。
ストリッパーもレズの娘も、同じように必死で生きている。
カメラは生きる彼らをごく間近に捉え、あなたの側にもいるリアルな存在であることを表す。
試合に臨むレスラーのむっちりした巨大な背中をすぐ後ろから追い、(筋書きのある「演技」とは言え)皮膚が裂け穴が開き血まみれになる試合をマットの上に帯同させる。
紫のライトを浴び、できるだけ頭をカラにして体をくねらせるストリッパーと一緒に踊らせる。
自分の感じていた孤独を父親も感じていたことを知るが、赦していいのかわからない10代後半の娘の顔をアップにし向き合わせる。
彼らが「特別」ではないことを語り続けるが、最後女は男に「特別」なのだと訴える。一般論などではなく、自分とあなたの一対一の関係が特別なのだと。
女も必死なら、男も必死である。中途半端なことはできない。俺の居場所はあそこなんだ、とリングを指差す。
あんただって同じだろ。唯一と決めた業を、何かと秤に掛けず命を懸けて立ち向かわないでどうするんだ、と。
その昔、ほんの中学生だった僕を魅了したミッキー・ロークは、これまで落ちぶれていた訳でも、この映画で復活した訳でもない。
彼は、自分の人生を駆け引きなく生きてきた。
体全体から漂う光と影の織りなすオーラが、さざ波になって映画館を出た僕をずっと追いかけてきた。
